愛されることの奇跡、愛することの軌跡
『ん?金澤か?君、せっかくソロパートあるのに音が小さくてよく聞こえない。もっと自信持って吹け』
「はい!」

そう、この曲は私がソロパートをやる部分があり、いつもは私より上手い2年生のカオリちゃんにやってもらうんだけど、

"もうすぐ引退ですから"

と私にソロの座を譲ったのだ。

『原、中断して悪かったな。とりあえず残りの曲も聞かせてくれ』

残りの曲の演奏後も、さっきのような調子で指摘していく先生。

吹奏楽の経験者なのかなぁ。
聞いてもいいのかなぁ。

『では、原、そろそろ終了してくれ。18時になるぞ』
『分かりました。では片付けてー。また明日、練習がんばりましょう』

後ろを向くと、もう先生はいなくなっていた。
< 63 / 548 >

この作品をシェア

pagetop