空の誓い、海との約束
笑わぬエトランゼ
◇ ◇ ◇
彼の第一印象は“笑わない怖い人”だった。
初めて会ったのは、四歳になったばかりの春。
その日、私はお母様から頂いた薔薇の花が咲いたのを見せたくて、小さな鉢を抱えてお父様の部屋へ走って行った。
「お、エミリア様。そんなに急いでどうなさいました?」
いつも私を可愛がってくれる王宮警備担当のランディが、私の前にしゃがみ込んで尋ねた。
「お母様から頂いた薔薇が咲いたの! だから、お父様に見ていただきたくて」
「可愛らしい紅色ですね。姫様にぴったりです」
「ふふ、ありがとランディ」
嬉しくて嬉しくて。私はノックもせずにお父様の部屋に飛び込んだ。
「お父様、見て見て! お母様がくださった薔薇の花が咲いたの!」
その時、部屋に居たのはお父様だけじゃ無かった。
お父様のそばに立ってこちらを振り返ったのは、王宮警備の黒い制服を着ている見知らぬ人。
城下に広がる海みたいな不思議な色の瞳と、レシュノルティアでは珍しい黒髪。
それが、彼だった。