とろける恋のヴィブラート
「いいよ、きっとあんまり仕立てがうまくできていなかったドレスだったんだね、仕方ないさ」


「でも……」


「またいいの買ってあげるから」



 柴野はそう言いながらにっこり笑って奏の頭をゆっくりと撫でた。その時、奏の脳裏に大切に手入れされた御堂のヴァイオリンが浮かんだ。


(せっかく買ってもらったから大切にしたかったのにな……)


「さ、遅くなってしまうからもう行こう」


「あ、はい」


 そういうと、柴野は奏の手を取った。
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