紅 き 瞳



「大丈夫だ。俺がいるからな……。ナオや親父にもお前を一人にしないよう言っておく」



安心させようと、優しく言ってみるもののリラの表情は硬いままだ。


どれだけ辛かったのだろう。


こんな小さな体に、こんな小さな心に、どれだけの傷が………。



せめて今だけは幸せな時をと……リラにIpnosi(催眠)の呪文を唱えた。






どれくらいの時が経ったのだろうか。


部屋の外で待っていたはずのナオが、俺の前に立っていた。



「リョウ……いや、ナイト様。そろそろ……」


タイムオーバーか――…。


ベッドで気持ちよさそうに寝むるリラの手の甲に、一瞬のキスを落した。


リラに幸せを……。



もう再び会えないかもしれないと思いながらも、小屋を後にした。





< 90 / 98 >

この作品をシェア

pagetop