お向かいさんに恋をして
「……好きな人かぁ。いないよ。
ただ……」

秋中さんが何かをいいかけたとき、胸ポケットの携帯が鳴った。

それを取り出してディスプレイを確認した秋中さんは

「二人とも、今日はこれで失礼するね、
あんまりはしゃぎすぎないようにね」

と、言い残してさっと自分の部屋に入って行った。

「ね、ね、さくらちゃん!
さっきのちゃんと聞いてた?!」

部屋に戻るなり留奈さんは興奮気味に私に笑顔で詰め寄った。

「顔、顔近いですって。留奈さんっ」

いくら女子同士だからって近過ぎっ!

ドキドキしながら後退り、間を置いた。

「あたし相手にも紅くなっちゃって、本当にさくらちゃんはウブねぇ」

言いながら留奈さんは所定の位置に腰を下ろした。
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