お向かいさんに恋をして
「こんなときに誰よ、もうっ」

グチグチ言いながらも携帯を確認する留奈さん。
電話じゃなくてメッセージだったらしく、無言で携帯の画面を目で追っていた。

そして、青ざめた。

「ホントごめんねさくらちゃんっ!
あたし、行くわっ!」

「あ、はい。
行ってらっしゃい、留奈さん」

パタパタと出ていった留奈さんを見送って部屋に鍵をかけ、ふぅっとため息を吐きつつも、つい笑みがもれる。

いつもながらに慌ただしいなぁ、留奈さんって。
ま、留奈さんらしい、かな?

私はテーブル前に座り直して頬杖をついた。
そしてぼぅっと考える。

秋中さんには、恋人も好きな人もいない。

けど「ただ……」な、なにかある女性がいる、らしい。
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