お向かいさんに恋をして
「あっと、じゃあ僕はこっちだから。
またね、波江さん」

「はい! 
秋中さん、お仕事頑張ってくださいね」

手を振る私に、軽く手を振り返しながら改札口を通過する秋元さんは、さっきよりも歩幅が大きく早い足取りだった。

私の歩く速度に合わせてくれていたんだな、と、秋中さんのさりげない優しさに気がついた。

そういうのって、一人前の女性として扱ってくれたような気がして、なんだかくすぐったい気分。

「さて、私も行かなくちゃ」

必要な切符を買って、私も電車に乗り込んだ。

役所に携帯ショップ、電気会社にその他色々……。
手続きに立ち寄らないといけない場所を全て周り終わった頃には、お昼をとっくに過ぎて、おやつの時間になっていた。

引越しって、荷物の整理や運搬も大変だったけど、手続きも大変。
人が一人移動するだけなんだからって、正直甘く考えてた。
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