ホストの憂鬱
第四章
こうして俺達はこっちの世界にいともかんたんに入ったわけだ。

入店初日はとくに記憶に残る日になった。

俺達はお互いの胸の鼓動が聞こえるんじゃないかと思うくらいにたかなっていた。

扉をあけた瞬間、一人の人物が店内を掃除していた。

事務所にはいなかった人物だ。

「おはよう」

彼が最初に言った言葉。

夜なのにおはよう。

それが当たり前の世界に入ったことがよくわかり、今までの世界との違いを区別する、言葉だった。

「おはようございます」

俺達は挨拶を返した。
< 19 / 134 >

この作品をシェア

pagetop