黒き時の物語

目的


「唖人と忌人はその昔
対立していた…」

「対立…?ジジイの話じゃ
唖人が暴れだすまで
世界は平和だったんだろ?
対立してたって…」

キルは首を傾げていた

「…そう、対立していたとは
いえ…お互いの長は争いを
起こす事はなかったのじゃ…」

「何でだよ?」

クローズは国王にそう聞いた

「わかっておったからじゃ…
互いが争えば互いに滅びると…」

「どうゆう事だ…?」

「唖人達と忌人達の力は
拮抗していたのじゃ…
つまり争いを起こせば
お互い滅びる事を長は
わかっていたのじゃ…」

「…待てよ、じゃあ何であの話の時
忌人の事を言わなかった?
それに忌人がいながら何で
唖人達は世界を滅ぼそうとしたんだ?」

キルが言っているのは
過去唖人達が巻き起こした
世界に混乱を招いた話だ

「忌人は…滅んだのじゃ…」

国王は窓からキルに視線を移した

「滅んだ…?唖人達がやったのか?」

「いや、違う…突如
姿を消したのじゃ…」

「何だって…?」

「だから滅んだと言うのは間違いかもな
じゃがそれから姿を
見せた事はなかったのじゃ…」

「そうか…それで唖人達は対立していた
奴等がいなくなり、あんなことを…」

つまり唖人と忌人は対立していたが
争う事は無く、それでいて
互いに事を起こせば互いが
滅ぶのを理解していた
だが、忌人がいなくなった事により
唖人達は行動を起こせたのだ

「そうじゃ…だがわからんのが
何故忌人は姿を消したのか…
そして今になって何故
姿を表したのか…」

「だが確かにあいつは忌人と言った…」

三人はしばらく沈黙した

「これは仮説だが…」

口を開いたのはクローズだった
二人はクローズを見た

「唖人が忌人達が消えた事により
行動を起こしたように
唖人が滅んだ今、同じように
行動を起こしだした…
今まで姿を隠してな…」

「忌人達は滅んだ訳じゃなく
唖人達が力を無くすのを
待っていたって訳か…」

「ただ、奴等の誤算は唖人は
完全に滅んでいなかった事だろう」

「それであいつは唖人である俺達を…」

「ようは様子見だろうな…
唖人の末裔達が昔と同じく
力が拮抗しているのかのな…」

クローズは忌人にやられた事を
思い出しながら下を向いた

「そして唖人が忌人にとって
恐れるに足らない者だと
知った今…忌人は行動を始める」

キルはクローズの言葉に続くように
言って、顔を合わせた

「まだ、唖人と忌人が
何で世界を滅ぼそうとするのか…
そこがわかんねえ…唖人は
自分の力を試したいと言ったが
本当にそうなのか?
自分達の力を試したいだけなら
それこそ忌人がいたんだろ?」

キルはまだ残っている疑問に
何やら納得いかないようだ

「わからないが…忌人がこの世界を
滅ぼそうとしている以上
止めるのが先だ…」

「けど今のままじゃ…
忌人には勝てない…」

二人は目的が定まっているが
それを実行する力が無いことを
悔やんでいた

「……少し考えがある…」

国王はそう呟くと
笑って二人を見た


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