恋の授業。



「今帰りですか?」



何もなかったように仕切り直して聞いてくるホクロメガネに、そう、と言う代わりにコクリと頷いた。



「今日はとっても充実した顔をしていますね。」



「わかるのっ?!」



心を見透かされたことに驚いた。

ワタシは、自他共に認めるポーカーフェイスだから。



ププっ!ポーカーフェイスって…!



昼間のマリの顔が浮かんで思い出し笑いをしてしまう。



「門限は?」



「門限?門限はちゃんと守ってるよ、まだ大丈夫ですっ!」



親みたい。



「そうですか、では…、少しベンチに行きませんか?」



腕時計を見ながら優しく誘うホクロメガネは、さっきと違って紳士だった。
パーカーとなんちゃってジーンズでも、紳士だった。



「ぅん。いいけど」



何故か照れてしまって声が小さくなる…



「では、車を置いてきますので先に…あー…」



途中で止めた言葉を飲み込むと



「ベンチに1人で居たら危ないので、車に乗って下さい。駐車場に置きに行くだけですから。」



そう言い直した。
きっと、ワタシが1人になることを本当に気にして、下心なんてないんだろうなぁと思うけど…



「その方が危なかったりして。」



ここはこう言うのがお決まりでしょ。



って、何突っ込んでんだか!


ワタシがすぐに笑ったのを見て、ホクロメガネもフッと笑うと、車に向かって歩き出した。


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