満たされる夜
「熱はないんですね」


「田崎、何度も言わせるな。そういう無防備なことはやめろ。ただの寝不足だ」


課長は迷惑そうにため息をつくと、またパソコンの画面を追い始める。

私のことを思い出して寝不足になってくれていたらいいのに。


「それなら眠れないときは、私が眠らせてあげましょうか?」


「ほぉ、どうやって?」


課長は鼻で笑いながら呆れたように言う。


「今度は私が……」


言いかけたとき、ドアが開いて他の社員が入ってくる。
私は急いで自分のデスクに戻った。


課長は私のことなんて関係ないように、昨日のことを詫びている。




“今度は私が課長を抱きます”



言ったところで、相手にされることはないだろうけれど。





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