満たされる夜
広いショッピングモールで新しいパンプスと服を買って家に帰る頃には、外はすっかり暗くなっていた。

自分のためにパンケーキでも作ろうかな。


ぼーっと考えながら歩いていると、後ろから車のクラクションが鳴って振り返った。


運転席の窓から遠藤が顔を出している。



「何やってんの?」


「休日出勤だよ。ロータリーでめぐ見かけて。一人だし、ついて来た」



よくよく見るとスーツ姿だけど、本当に仕事なのか分からないし、遠藤の家は反対方向だ。最初から狙って来たとしか思えない。



「伊丹さんに放ったらかしにされてんだろ?」


「今更何がしたいの?付きまとわないで。アンタはちゃんと家庭に入りなさいよ」


「地位に目がくらんだけど、やっぱりめぐがいいんだよ」



そんな言葉で騙されるほどバカじゃない。ずっと二股に気づかないほどバカな女だったけど。



家の前に着くと、遠藤はハザードランプをつけて車から出てくる。

手を掴まれそうになった、そのときだった。



「おい、遠藤とかいったな。めぐみに触るな」
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