一夏の花


 描きかけの、目の前に広がる忙しない病院の風景。

 そのまま描く。想像妄想は一切含めずに。


 ここが私の退屈な世界。狭くて苦しい世界だ。
 自分を納得させるようにただ手を動かす。

 傍からは一心不乱に絵をかくように見えるらしい。
 そしてそれは両親からも医者からも喜ばしいことみたいなので好都合であった。医者はともかくいつも自分を心配している両親をさらに心配させるのは嫌だ。
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