トレモロホリディ
料理を待っている間、私は店内をキョロキョロと見回していた。


カウンター席にはスーツを着た男性が数名。


テーブル席にはカップルだったり、男性同士だったり、女性同士だったり、色んな組み合わせのお客さんがいる。


こんな遅い時間でも、こうしてご飯を食べる人って結構いるものなんだね。


「お待たせしましたー」


女性の元気な声に顔を上げると、料理の載ったトレーが私の目の前にカタンと置かれた。


「わ、おいしそう!」


思わず声を上げると、その女性はにっこりと笑った。


「ゆっくりしていってね」


その笑顔に私も笑顔で返して、早速お箸を手にした。


お箸でハンバーグをサクッと切ってみると、中から透明で流れ出すジューシーな油。


濃厚なソースがたっぷりついたハンバーグを口に運ぶと。


「わぁ、おいしい!」


人目もはばからず、私は感嘆の声を上げた。


味は気取った感じじゃなくて、家庭で作るハンバーグに近いような気がする。


しかも、この大きさにはビックリ。


添えられたサラダやひじきの煮物も量が多いし、お味噌汁も具がたっぷりでおいしそう。


そのお味噌汁をぐぐっと飲んでみる。


おぉっ、これは…!


丁寧にダシがとってある。


味噌の味もいいな。


田舎のばあちゃんの作る味噌汁に少し似ていて、なんだかすごく懐かしい。


小さなお皿に乗せられた漬け物は、ぬか漬けだし。


ひとつひとつの仕事が、なんて丁寧なお店なんだろう。

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