トレモロホリディ
「あ、美菜ちゃん」


呼ばれてパッと湊君の方を見ると、湊君の手が私のすぐ目の前に来ていた。


突然スッと伸びてきた手に、ドクンと心臓が跳ねる。


「そろそろ染めようか」


そう言って湊君が、私の髪を一束手に取った。


「え…?」


「根元が伸びて来たみたい」


「あ、あぁ」


な、なぁんだ。


髪の毛のことか。


湊君に髪を染めてもらってから、気がつけば結構時間が経ったってことなんだね。


「二次面接の前には綺麗にしておかないとね。

ツヤツヤに仕上げようね」


「ふふっ。

うん。

ありがと…」


「俺が魔法をかけてあげるから。


面接に成功するようにね」


そう言うと湊君は、よしよしと頭を撫でてくれた。


その優しい感触に、なぜか涙が出そうになった。

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