トレモロホリディ
蕾が開く時
その日、私は定時で仕事を終え、ダッシュで会社を飛び出した。


湊君に会って、早く話がしたかったからだ。


このままどこにも寄らずに真っ直ぐ帰れば、湊君の出勤まで2時間くらいは会えるはず。


急ぎ足でアパートに帰り、湊君の部屋に入ると、


今まで部屋には無かった、絵を斜めに立てかける木製の台が窓際に置かれていた。


「湊君、あれって…」


「うん。

イーゼルっていうんだ。

美菜ちゃんの会社に行った帰りに買って来たんだ」


そのイーゼルには、とても大きな紙が置かれている。


「すごく大きな紙だね。

こんな大きな作品になるの?」


「うん」


3枚って言われてたけど。


こんなに大きな作品、12月のオープンまでに間に合うの?


なんだか、ちょっと心配…。

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