トレモロホリディ
「まぁ、そういうことだから。

気をつけて」


「あ、はい。

ご親切にありがとうございます……」


肩をガクッと落としつつ、私はぺこりと頭を下げた。


「あーこれ、ありがとう」


そう言って男性が、ティッシュの箱を軽く持ち上げる。


「い、いえ。

それでは失礼しますー」


なんだか気恥ずかしくて、急いで自分の部屋に立ち去ろうとしたら「ちょっと」と声をかけられた。


「その大量のティッシュの箱、どうすんの?」


「へ?」


両手に持った紙袋。


それを見ながら、その人がクスッと笑う。


「あーまぁティッシュなんで、いくつあっても困らないし。

これ、お肌に優しいタイプなんです」


両肩を上げて、私もにんまりと笑った。


「俺さー、これ結構好きなんだ。

良かったら半分もらっていいかな」


「え……?」


「あ、自分で使うなら別にいいけど」


「い、いえ、どどどーぞ。

半分とは言わず、全部でも」


そう言って私はガサガサとふたつの紙袋を彼の前に差し出した。


「ありがと。

でも半分でいいよ」


そっと手を伸ばして、紙袋を一つだけ受け取る彼。


「じゃあ」


「あ、はい」


その人はにっこり笑うと、白い扉をゆっくりと閉めた。

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