あたたかい場所
二人の時間


「あっついな~」
美紗は手を仰ぐようにパタパタと揺らした。


梅雨が明け、七月に入った。

大阪の夏も暑いけど、東京の夏も十分暑い。


今日は美紗と一緒にショッピングビルに来た。
おじさんと、僕の妹の由香の誕生日プレゼントを買うためだ。


本当は二人とも一ヶ月程誕生日は先だけど、
美紗は新曲発売することで忙しくなるから、練習だけの今日に僕の都合を合わせた。

「何にする?由香ちゃんは何が欲しいん」

「分からない。美紗が選んで」

「うちー?若い子は分からんからなぁ」
自分だってまだ22じゃん。そんな風に思いながらケラケラ笑う美紗を見る。


美紗は、変装の為に顔を覆うような大きいサングラスをかけている。


これは、僕がかけさせた。

美紗だとバレるともちろんまずいし、美紗は嫌がったけど面倒なことになるのも困るからだ。


多分、バレないはず。


スタスタ歩いて行く美紗を追った。
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