どうしようもないくらい好きでした(仮)



「この目で見てみたいんだ」


そう言うと私の体をそっと反転させ、自分と向かい合うようにした。


相変わらず涙が零れ続ける瞳で陸を見つめる。
その眼差しは、もう少しのブレもない。
真っ直ぐで力強い光が宿っていた。


「この足で行ける場所に立って、この目で見られる物を見てみたい。
人の意見や情報で得たものじゃなくて、ちゃんと自分自身の価値観で。
世界中の綺麗な物も、汚い部分も全部」


優しく微笑む陸は、とても綺麗だ。


「だから俺は旅に出るんだと思う。
結局は自己満足の我が儘な生き方で、
それがこの先ずっと許されるとは思わない。だから、もう少しだけ。
こんな俺を見守ってて欲しいんだ」


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