どうしようもないくらい好きでした(仮)



陸は、私の背中に回していた腕をそっと解くと、優しく髪に触れる。


そして私の顔を覗くように、少しだけ身体を引き離すと、その大きな手のひらで包み込むように、私の頬に触れた。


「会いたかった」


呟いた陸の瞳が、何だか潤んでいるように見えて、頬を包み込むその手の上に、私は自分の手を重ねた。


「ななちゃんの手、冷たい。ずっと待っててくれたの?」

「待ってたよ。ずっと待ってた」


陸の顔も、周りの世界も滲んで見えなくなっていく。


私、泣いてるんだ。


気づけば自然と流れ落ちていた涙を、陸が親指で拭ってくれる。


嬉しくてたまらないのに、後から後から溢れ出す涙は、私の頬も陸の手のひらも濡らしてしまう。


「ねえ…陸、すごく幸せなのに涙って流れるんだね?」


私はそっと微笑んでみせた。













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