あたしの証~番外編~
これほどまでに、俺はあかりを愛していたというのに。

もっと早く素直になればよかっただけなのに。



“復讐”という呪縛でがんじがらめにしていたのは俺なのかもしれない。


自宅のドア前まで来ると、そこにはしほがいた。
浮かない顔でそこに佇んでいる。


そう言えば…今日行っていい?ってあったな。
返信すっかり忘れてた。



「しほ」


俺が声をかけると、しほはバっと顔を上げる。


「夏樹…」


それからそう呟いたっきり、再度俯き口を噤んでしまった。


「…ここで話すのもなんだから…中入って」

「うん」


鍵を差し込み、ドアを開けると俺はしほを先に入るよう促した。
しほは戸惑いながらも、部屋の中に入る。


リビングまで来ると、立ち止まった。



散らばるしほの衣類。
俺はそれに一切、手をつけてなかったから。



しほは暫く黙ったまま、衣類を見つめる。
それからその場にしゃがみこむと、静かに涙を流した。
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