この道を、君と
「ねえ、ママ」

砂都美の服の裾をつかんでいた澪が、沈黙を破った

視線をやると子供とは思えない真剣な瞳が、砂都美を見上げていた

「あのね、ママ。みお、いもうともおとうともいらないよ。だからね、ママにもどってきてほしい」

「…っ」

もう限界だった

流れる涙は、なぜだろう

ふわりと暖かな温もりが抱きしめてくれる

子供をあやすようになでられた髪

抱きしめてくれる強い腕

変わらない香り

ああ、やっぱりもう一度ここに居たい

「今日さ、澪と一緒に砂都美のところに行こうかって話してたんだ。あのまま終わりにしたくないし、放っておいたら年下の小型犬に砂都美を捕られそうだし、それに、」

それに、この間会った砂都美がやっと一歩を踏み出したような気がしたから

やっぱりあの笑顔だけは誰にも渡したくないと思うから
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