妖精と精霊と人間と

　その日の夜。美香は騒音で目を覚ました。窓ガラスの割れる音、イスを壁にぶつける音、食器や花瓶の割れる音、とにかく煩い。美香がガバッとベッドの上に起き上がると、その部屋中に彼女の叫び声が木霊した。
　皆が部屋に駆けつけると、美香は淡い黄色のドレスを着ていた。
　「あぁ、北斗！一緒に踊りましょう。今日は、楽しいダンスパーティですもの♡」
　美香はそう言うと、北斗を連れて一階に大広間へと向った。そこには、すでにこの世から去った者達が、踊ったりワインを飲んだりしていた。
　「どうかなさったの？北斗。さあ、踊りましょうよ。」
　変だとは解かっていた。美香がこんな言葉遣いをするはずもないし、明一人を置いてくるはずもない。だが、好きな人に誘われてしまうと、弱い。北斗は逆らう事なく、美香に着いていった。
　北斗と美香は、ホールの中心で踊った。全ての観衆の視線を感じられる、その場所で。ダンスが終わると、美香は北斗を連れて外に出た。