あふれる涙のドロップス
「トリック オア トリート!」


 
 小さな子どもたちの声が、玄関の方から聞こえた。続いて、母の声。




「あらあら、よく来たわね。これ持って行ってね」



 
 そう言って、きっとアメか何かを子どもたちに手渡したのだろう、子どもたちの『わーい!』という歓声が聞こえる。



『おばさん、ありがとう!』



「どういたしまして!」



 子どもたちは帰っていったようだ。



 母さんが僕のいるキッチンへと戻ってきた。



「可愛いわね、小さい子どもたちは」



 そして、次に僕を見てはーっと、ため息をつく。



「それに比べてうちのこれは…」



 現在の僕の格好は、学校のジャージに、風呂あがりに髪を拭いていたタオルを首にかけている。で、そのスタイルでテレビをボケーッと見ていた。



「これが何か?」



 僕はそう母さんに言い返して、冷蔵庫を開ける。「いろいろ悪いわよ!テレビなんか見てないで勉強でもしてきなさい!」ギャンギャンと吠える母さんの声は、まあ、無視。



 僕はオレンジジュースのペットボトルを手に持ち、「じゃ、勉強してきまーす」と母さんに言って、自分の部屋に戻る。



 
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