君と歩く未知
 アタシの目はずっと一点を見つめたまま。
譲ってもらった座席が、地獄のように見える。
隣のおじさんが、悪魔のように見える。
アタシはその場にペタンと座り込んだ。
美和ちゃんがアタシの手を握る。
「どうしたの!?ねぇ、弥生ちゃん!」
アタシにはもうそんな美和ちゃんの声は届かない。
心の暗闇の中に独りでいるみたいだった。
「イヤ、イヤ、イヤーッ!!」
アタシは狂ったようにそう叫んで激しく首を横に振った。
涙が止まることなく流れ落ちる…
アタシは小さな声でぼんやりとした意識の中で言った。
「カズくん…ごめんね…」
 アタシは次の駅で美和ちゃんに手を引かれて電車から降りた。
美和ちゃんはアタシをベンチに座らせ、にジュースを買って来てくれた。
アタシはそのジュースを一気に飲んだ。
それは、自分を落ち着かせるように、何かから気を反らすように…
「弥生ちゃん、落ち着いた?何があったの?」
美和ちゃんからの問いかけにアタシは俯いたまま話した。
「…あのね、アタシ、男の人が怖い。みんな昨日のレイプの犯人に見えちゃうの」
アタシがそう言うと、美和ちゃんはアタシの背中をそっと撫でた。
「今日は学校休んだ方が良いよ、家まで送るから。…文化祭のことなら心配しないで。アタシ遅れてもちゃんと学校行って、和哉を手伝うからさ」
アタシは美和ちゃんにそう言われて強く頷いた。
 …今無理して学校に行ってもきっとダメだ。
カズくんのことさえ怖がってしまうかも知れない。
そんなことしたら、カズくんは傷付いちゃうよね…
もうイヤだよ。
悲しくて、苦しくて、自分の力じゃどうにもならない…
アタシは今日だけと言わず、しばらくの間、学校を休むことに決めた。
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