好きと言えなくて
彼の帰る場所
電話は、すぐに繋がった。私は、店の前で足を止めた。

声が、出ない。返事すら、できない……。

『葉子さん? 葉子さん? どこにいてるの?』

電話の声が、妙にデカい理由がわかった。正義は、駐車スペースのほうから、私の目の前に現れた。

「わぁぁぁ! おった!」

驚きのあまり、正義が腰を抜かした。私は、冷静に電話を切り、手を差し伸べた


「あ……ありがとう……」

「なんでそんなところにいてるん? デートやったんちゃうの?」

かわいくない口調で言うと、正義は、苦笑いをした。

「ところで葉子さんは、なんでそのヘルメットを持ってるん?」

「これは……処分しようと思ったんや」

私は、またかわいくないことを言った。正義は、顔を曇らせた。


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