好きと言えなくて
なんとか無事!? 結婚式が終わり、教会の近くのレストランで、披露宴が行われることになっていた。

みんながゾロゾロと移動するどさくさに紛れて、コッソリと正義の元に歩みよる。

「なんで正義がここに?」

「オレの家、この教会の近所やねん。結婚式の日は、シャンパンふるまってるのを知ってたから、ちょっと覗きに来た」

正義、この近所に住んでいるんや? 五年も付き合っているのに、初めて知った。

この教会の門は、出入り自由になっていて、式を終えた花嫁さんを見に、通りすがりの人たちが集まっていた。正義も、そのうちのひとり。

「それと……」

「それと?」

「おめかししている葉子さんに会いたくて……へへっ」

そう言って照れ笑いを浮かべる正義を、かわいいヤツやと思った。そんなこと、口にはできへんけれど。

「あ、私、披露宴も出るから。終わったら、連絡するわ」

「あ、葉子さん!」

背を向けた私を、正義が呼び止める。

「なに?」

「今日の葉子さん、めっちゃ綺麗」

< 55 / 93 >

この作品をシェア

pagetop