好きと言えなくて
なるように、なれ
「あ、葉子ちゃん!」

事務所を飛び出した私に社長が声をかけてきた。

「社長、すみません……今日は、帰らせて下さい……お疲れ様です!」

ぺこりと頭を下げると、走って商店街を逃げ出した。でも、家には帰られへん。公園まで走ると、ベンチに座った。

勢いよく飛び出したから、ロッカーに鞄も財布も置いてきた。でも幸い、ポケットにスマホが入っていた。

夜になったら、なに食わぬ顔をして、家に帰ろう。それまで……なんとか時間を潰そう。

『まだ好きなん? 川之江さんのこと』

『葉子さん、川之江さんとやり直したいって、思ってんちゃうの?』

正義の言葉が、耳に響いた。

あの日、久しぶりに会って話しただけやのに……なんでそうなるねん? くそっ、正義なんか……正義なんか……!

悔しさで胸がいっぱいになり、ポロポロと涙がこぼれ落ちた。すると、不思議なことに、太くんの笑顔が頭に浮かんだ。

……連絡、してみようかな……?

涙で滲んだ目で、スマホをみつめた。

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