嘘つきなポーカー 1【完】


その時、松本先生から言われた言葉が蘇る。


―― 誰かの特別になりたいって思うようになったらそれが恋の始まりなんじゃない?


由佳は考えた。

そもそも、何故奈津子と薫がキスしていたのを見て、胸がざわめいたのだろう。

それはきっと、2人にキスをしてほしくなかったからだ。


何故奈津子に、薫が由佳に優しくするのは同情しているからだと言われ、胸が痛んだのだろう。


それはきっと、薫が由佳に優しくする理由が同情であってほしくなかったからだ。


「じゃあ何であってほしかったの?」


由佳は自分自身に問い掛けた。

その答えは明確だった。


「きっと私は、小野寺薫の”特別”で在りたかったんだね…。」


由佳は呟いた。






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