優しくないっ、優しさを感じない!


「……え?」


…思いもしなかったその言葉に、あたしは間抜けな顔をポカンと返すだけ。そんなあたしを見て進藤は、笑った。



「おまえが俺を好きになれば良い」



そう言って、進藤は笑ったんだ。


でも笑ったのは確かだったけどーーそれがどんな笑顔だったのかまでは、残念ながら分からなかった。


すっかり暗くなった時間。駅前から離れようと少しズレた立ち位置の進藤。そこは、駅の光からは外れた、もうそこまで来ている夜の闇への入り口だった。


ハッキリとは見えない表情は、その言葉の意味を、進藤の真意を、伝えてはくれなかった。

そして去って行く進藤の後ろ姿を、あたしはただ、ただただ今の言葉を、状況を、ぐるぐると巡らせながらぼんやりと眺める、そんな事しか出来なかった。


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