優しくないっ、優しさを感じない!


…いつも通りに、明るいトーンで口にしたコースケの言葉。


ーーヒヤリと、温かかったそこに冷たいものが流れ込む。


昨日から変だったって…聞いた?


すると、その瞬間だった。ざわざわとあたしの奥底からそれは…欲求は、あたしの感情に触れながら湧き上がってくる。


…だ、ダメだよ。そんなのダメだ。


その気持ちを食い止めようと、必死になる。でもそれはすぐそこまで来ていて、何からも関与されるつもりもないとでもいうように、堂々とあたしの中の色んなものを押しのけて向かってくる。


ダメ。ダメだって分かってる。でも…そんなのやっぱり…やっぱり……


…そしてそれは、あたしの意思すらも相手にせず、ついには力任せにも似た勢いであたしを追い越していった。

欲求は、いとも簡単にあたしの意思をこえていったんだ。



「…き…聞いたって…」


あぁ、言ってしまう。もう我慢出来ない。


「誰から…聞いたの?」


ーーそれは、その欲求にあたしが負けた瞬間だった。

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