優しくないっ、優しさを感じない!


「騙されたって何?俺がおまえに優しく無かったら騙した事になる訳?」


そう言って、言葉と共にジロリと奴はあたしを睨みつけた。その目力に悔しくも一瞬怯んでしまったりした訳だけど…でも負けてたまるかと、あたしは自分を奮い立たせる。


「そ、そうだよ!爽やかで優しげで良い人そうだったじゃん!」

「それは勝手におまえが感じただけだろ?俺はただ親切にしただけだ」

「いや、親切って優しくする事じゃん!」

「優しさを持たなくても親切には出来るんだよ」

「は?優しいから親切に出来るんでしょ」

「…だからおまえはバカだって言ってんの」


そう言ってまた、奴は溜息をつく。それはまるでさっきと同じ…おい、あたしは知ってるぞ。もう学んだぞ。それは呆れてるんだな?


「また、そうやって…!」

「まぁでも、別にそんな事分からなくても良い事か」

「…え?何で?」

「だってその方が幸せだろ、優しくして貰ってるって感じてた方が」

「え?まぁそりゃあそうでしょ。優しくされた方が……って、またあたしの事バカにしてる?」


…なんだかもう、逆に感心すらしてきた。


< 33 / 310 >

この作品をシェア

pagetop