優しくないっ、優しさを感じない!


するとそこで奴は、本日二度目になる微笑みをあたしへと向ける。


「分かっててもそう上手くはいかないよ。だから無意味な事を続けられる奴は強い。下手くそだけど、強いんだ」


…それはまるで、どこぞの恋愛スペシャリスト様のお言葉の様。

どこのスペシャリスト様か存じませんが、そうおっしゃった今目の前におられます進藤さんは、不敵で素敵で無敵な笑みを浮かべてらっしゃいました。

そしてそこに何故か感じる…絶対感。


この瞬間あたしは、この人の言う事は正しいと…何故か感じてしまった。というか、感じるようになってしまったのです。特に、恋愛面において。というか、恋愛面に対して積極的に!


「れ、恋愛マスター!」

「…は?」

「あたし頑張ります!無意味に頑張ります!」


「よし!穴あけてやるぞー!」となんだかむくむく湧き上がる意気込みをみせるあたし。そんなあたしを見て大きな溜息をついた進藤は、やれやれと笑った。


「言っておくけど、諦めた方がいいとは思ってるけどね」

「でも諦められないの分かってんでしょ?すごいよねー、もうあたしのこと分かってる!さすが恋愛マスター!」

「…それやめてくれる?」


そしてそのまま、その日は二人で帰宅した。学校から一緒に帰ったのは初めてで、なんだか進藤と仲良くなれた、そんな気がした良い一日だった。





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