季節と君のとなりで

17年

いつもの春。


いつもの朝。


竹林 蕾(たけばやし つぼみ)は外に出た。

心地よい柔らかな春の空気。

少し冷たくて、でもどこか暖かい。

蕾は春が好きだ。

春生まれだからかも知れないけど。



17歳の誕生日の前日。

素敵な朝に、蕾の心は弾んだ。



「あ、おはよ」

「はよ」

となりの部屋から笠原 千夏(かさはら ちなつ)が出てきた。

名前だけ聞くと女子に思えるが男子。

同じアパートの隣の部屋に住んでいる。

いわゆる幼馴染みで、高校も同じ、クラスも同じ。


時間を合わせているわけではないけれど、ほぼ毎朝出会うので一緒に登校している。

〈一緒に登校する〉ことを何とも思わないくらいの古い仲だ。

< 1 / 16 >

この作品をシェア

pagetop