これが、あたしの彼氏です。【完】



今のこの状況をすぐにでも抜け出したいと願っていた、次の瞬間、

「ちょっとあんた達!心に何してんの!?」

「…うわ。邪魔者登場ー」

「………!」

部活を終えたらしい由希が、あたしたちの間に割って入って来た。

「…心に何か用?さっさと帰って」

「分かった分かった。大人しく帰るからぁ、そんな怖い顔しないのー」

由希が怒気を含んだ声でそう言うと、ギャル達は呆気なくも来た道をさっさと戻って行ってしまった。

「………由希、ごめん」

「良いのよ。大丈夫だった?」

「…うん」

「また何かあったら言いにおいで」

「うん…ありがとう」

あたしが小さく頷くと、由希は薄く笑って「帰ろっか」とそれだけ返して来てくれた。



「…………」

――本当は、薄々勘付いていた。


何処に居ても目立つ矢沢君の彼女になるだなんて。
幾ら上辺だけだと思っていても、周りは思った以上に単純で、モテはやされている矢沢君と一緒に居れば居る程、いつかはこうなる日がやって来るんじゃないかって―――

でも、今更そんな事を思ったとしても、きっともう遅い。もっとちゃんと警戒しておけばよかったと、心の奥底で自分を悔やんだ。あたしは、あまりにも無防備過ぎたんだと思う。


――――突然やって来た不運の嵐は、物凄いスピードで、あたしに襲い掛かって来た。

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