ユーダリル
息子達の憂鬱

 寝台に横になっているウィルが、急に唸り声を発する。それは病気の影響で苦しんでいるわけではなく、悪い夢を見て魘されていたのだ。それも精神にダメージを与えるだけではなく、肉体的疲労も大きい。

 するとその時、奇声とも取れる叫び声が響き渡った。その声に洗濯物を畳んでいたユフィールの身体を震わせると、慌ててウィルの様子を見に行く。そして、恐る恐る声をかけた。

「大丈夫ですか?」

「……両親の夢を見た」

 閉じていた瞼を開けると、一言そう呟く。それはかなり衝撃的な内容だったのか、身体は汗で濡れていた。

 普段とは異なるウィルの姿に、ユフィールは言葉を失う。そして、噂の人物の凄さを改めて実感した。

「何で、夢の中に……」

 額に滲む汗を拭うと、寝台から起き上がる。そして大きく深呼吸をすると、頭を抱え両親に会いたくないと訴えはじめる。それは魂の叫びに近いものがあり、ことの深刻さを物語っていた。

「今日ですね」

「そう、そうなんだ」

「此処にいれば、大丈夫です」

「大丈夫だと思いたい」

 幸いなことに、ウィルが別に暮らしているということは知らない。それは、ひと時の安らぎを奪いたくない。そのような理由から、両親へは内緒にしていた。いつもは煩いと思われているアルンであったが、これに関しては心から感謝ができた。だが、安心はできない。

 噂というものは、意外なところから漏れ出るもの。その為、両親が帰るまで油断はできない。

 そう特に母親は、油断できない人物だ。

「いざとなりましたら、逃げましょう」

「……大胆発言」

「ウィル様が、嫌がっておりますので」

「その考えも、いいかもしれない」

 両親と顔を合わせないで済むのなら、ウィルは何処へでも行くだろう。たとえ肺炎を起こしている身体であろうと、関係はない。あのラブパワーを目の当たりにしたら、治るものも治らない。アルンが言っていたように、いつまで経っても二人は新婚当時の気分でいる。
< 102 / 359 >

この作品をシェア

pagetop