ユーダリル

「姉は、このようなことは得意です」

「そうだね」

 ユフィールからの言葉に、ウィルは大きく頷く。心が広いからこそ、アルンを受け入れた。

 何も好き好んで、苦労する相手との結婚は望まない。しかし、考えればアルンの相手はセシリアしかいない。現に彼女がいなければ仕事が捗らず、怠け癖を見せていたに違いない。

「静かになってほしいよ」

「他のメイド達も喜びます」

「メイド達……兄貴は、人気ないね」

「ええ、ちょっと……」

 あの性格を考えれば仕方がないことだが、自分に人気がないことをアルンは自覚していない。自覚していないからこそ、あの性格のままで突き進む。お陰で、ウィルの人気は急上昇。

 だが、アルンはいまだに気付いていない。


「ウィル様は、お優しいですから」

「そうかな?」

「はい。お優しいです」

 そう何度も「優しい」と連呼され、流石のウィルも照れ臭くなってしまう。それを隠すように掛け布団を頭まで被ると、何も言わなくなってしまった。その姿にユフィールはクスっと笑みをもらすと、サイドテーブルに置かれた皿を持ち、キッチンがある部屋へ向かう。

 そして、夕食の買出しに行くことにした。


◇◆◇◆◇◆


 数日後――

 病気を治したウィルは、アルンのもとへ報告に向かう。無論それに対して、良い顔と返事はしない。

 それでもセシリアの一言で、了承を得ることができた。良い方向へと進む二人の関係。それに気付いたセシリアやメイド達は喜びを見せていたが、アルンはブスっとした表情を浮かべ愚痴を言う。

 だが、その愚痴を聞く者は誰もいない。

 そしてウィルとユフィールは、仲良く買い物に向かった。
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