ユーダリル

 セシリアはコホンと咳払いをすると、自身が思っていたことを伝えていく。無論、包み隠さず全てを話していった。流石にセシリアからの言葉ということだけあって、アルンは真剣な顔つきへと変わっていく。

 語られた言葉は、思いっきり愚痴であった。それも溜まりに溜まったストレスと共に吐き出され、言葉の端々に鋭いトゲが見え隠れする。それらは一気に、アルンへと襲い掛かった。

「そ、そうか」

「これが、私の本音です」

「考えておく」

「宜しくお願いします」

 セシリアの心情を理解したアルンは、それしか言えなかった。流石セシリアの言葉は強く、ブラコンという性格を矯正しつつある。しかし、油断はできない。物事は、最初が肝心だ。

 だが、アルンに考えるという行動を起こさせたことは、大きな成果に近かった。これでウィルとユフィールの関係を素直に認めれば、万々歳であったのだが、問題はどのようにして認めさせるか。いくら考えたところで、結論がいい方向へ働かなければ、本も子もない。

 意外に、これが難題だった。だが、ウィルとユフィールは付き合っている。今更、別れさせるのは可哀想だ。

 それに大好きな弟の未来を奪うなど、アルンにできるわけがない。もしできたとしたら、これはこれで天変地異の前触れとなってしまう。この場合、ブラコン性格を利用するのが一番だ。

 セシリアは、頭の中でこれから先の計画を練っていく。無論、これに関しては周囲の協力も必要となるので、後々説明をしようと考えていた。そして、決行の日は――正直、楽しくて仕方がない。

 年に一度の、一大イベント。

 珍しいことにセシリアは、物凄く乗り気であった。

 だが、アルンだけがへこみ挫けていた。

 やはり、セシリアには勝てないようだ。


◇◆◇◆◇◆


 複雑な風の流れを読みながら、ディオンは大空を舞っていた。大きく翼を広げ優雅に飛ぶ姿は、ひとつの絵画に描かれてもおかしくないほど雄大で、飛竜の偉大さを前面に表していた。全ての空を熟知している飛竜。そのひとつひとつの動きは、溜息が出るほど美しい。
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