ユーダリル

「おはようございます」

 深々と丁寧に頭を下げるのは、いつもの癖。ウィル相手にそこまでしなくてもいいとわかっているが、ついつい頭を垂れてしまう。それを見たウィルは苦笑すると、堅苦しいのは嫌いと伝える。

「き、気をつけます」

「そんなに、気張らなくていいよ。それと、昨日は眠れた? それだったら、いいのだけど」

「大丈夫です。それに、本当にいいのでしょうか? 私、普通に床に寝ていても平気ですから」

「駄目。メイドは身体が資本」

「それは、ウィル様も一緒です」

「平気だよ。床に寝て風邪をひくくらいじゃ、やっていける職業じゃないし。それに、野宿は得意だよ」

 そう言うと、仮の寝床から起き上がる。ウィルが寝床として使用しているのは、床の上。無論、固い床なので背中が痛むが、これくらいは我慢の範囲。何より、ユフィールを床の上で寝かせる訳にはいかない。

 女の子の肌はか弱い。これで跡でも残ったら、一大事だ。それに、メイドの仕事の大変さは理解している。

 その為、寝床くらいは確保してあげないと可哀想と判断したウィルは、自身の寝台を貸した。それは最低限の礼儀であり、何かを頼んでいるのだからこれくらいはしないといけないと思っていた。そのように思って貸したのだから、ユフィールの言葉は受け入れなかった。

「で、飯は?」

「ご用意してあります」

「やっぱり、飯が用意されていると楽でいいよ。時々、作るのが億劫になる時があるからね」

「お口に合えば、いいですが」

「前の飯、美味かったよ」

 その言葉に、ユフィールの顔は紅潮していく。やはり、好きな相手に言われた言葉。実に、気分がいい。それと同時に、もっと料理の腕前を上げていかなければいけないと決意する。

 今日の昼と夜は、何がいいか。

 常にユフィールは、食事の心配をしている。食事は、物事の資本。それがわかっているので、ついつい気合が入ってしまう。最近では自分でパンを焼けるようになりたいと、練習をしている。その結果、ユフィールは何でもできつつあった。そう、全てはウィルの為に――
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