ユーダリル

 一体、何処へ――

 ふと、疑問に思う。

 ユフィールは、それを言葉に出す。

「ギルド」

「えっ!?」

「挨拶だよ」

「確か、以前のマスターの方は……」

「そう、辞めた。兄貴の影響らしいね。まあ、個人的に以前のマスターは、困った人物だったよ」

「ご苦労なさいました」

「うん。有難う。そう言ってくれると、嬉しいよ。で、ユフィールと買い物ついでに挨拶だ」

 ウィルの言葉に、ユフィールは嬉しそうに微笑む。それに彼女自身、新しいギルドマスターがどのような人物か、気になっていた。そう、ウィルが安心して仕事ができるかどうか。それが、重要だった。

 その時、ウィルが意味深な言葉を発する。

 それは、新しいギルドマスターを見極めてほしいというものだった。何でも、今回のマスターは女性らしい。よって、女性同士の方が相手のことがわかりやすいのではないか。

 そう、判断したらしい。

「いい?」

「は、はい」

「助かるよ」

「ウィル様は以前のマスターの件があるので、相手の方の特徴を捉え……ということでしょうか」

「鋭いね」

 流石、セシリアの妹というべきか、普段はのんびりとした大人しい一面を醸し出しているが、鋭い時は鋭い。

 こういう部分でウィルは、ユフィールがセシリアの妹だと再認識する。しかし、セシリアと性格は違う。まさに、正反対。個人的にウィルは、ユフィールの方が付き合いやすかった。

 危ない場所以外、ユフィールをこのように連れて行ったりする。

 それだけ、仲がいい証拠。

 ウィルは、ユフィールの手を握る。その瞬間、間近で見ていたディオンの身体がピクっと動く。以前のように、激しく感情を露わにすることはしない。二人の関係を認めた。尚且つ、ユフィールに服従したからだ。その為、ちょっと寂しい思いをするが、暖かく見守る。
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