Moon Light


「外野どもはガタガタうるせーんだよ。兄貴が選んだ女性にお前らが文句を言う筋合いはねーだろ!」



その罵声にその場にいた全員が彼を注目し目を丸くする。騒ぎ立てていた親戚達は一瞬にして静かになった。



しかし私はその彼を見た途端、一気に青ざめ冷や汗を流したのだ。



ど、どうして…彼がここにいるの?
幻かと目を疑ったがどうやらそうではないらしい。



彼は私を見てふっと微笑むとその場からさっさと出て行った。追いかけなきゃ…。私は本能的にそう思った。



正樹にはトイレに行きたいと嘘を吐き彼を追いかける。すると長い廊下の先を曲がる彼の姿が見えた。私は脇目もふらず後を追う。



角を曲がった所で勢いのあまり誰かにぶつかるとそのまま抱きしめられ側の部屋に連れ込まれた。



「久しぶりだな」



頭上から降ってくる懐かしい声。私が狂おしい程に愛した男のものだ。



「どうしてっ。なぜここにいるの!?」




「そんなこと、後からでいいだろ」




私の後頭部をがっちり掴んだ男は私の唇を強引に奪った。懐かしい煙草の味がするキス。夢ならこのまま覚めないで。





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