神楽先生には敵わない


その時会場のアナウンスが聞こえてきて、大会の終了を告げた。


「あっという間に終わっちゃったねぇ。早かった」


先生は笑みを浮かべたままベンチからスッと立ち上がる。

周りにいた観客達も慌ただしく動き出し、
帰宅の準備を始めたようだった。



「僕達も帰ろうか~」

「…」



私に背を向けてうーんと両腕を上げて背伸びをする。

少し釈然としない私は暫くベンチから立てなくて呆然としていた。



そんな私の様子がおかしいと思った先生が振り返ってみちるちゃん?と声をかけてくる。


「あ、はい、そうですね…!」



―――何だろ、このもやもや。





まるで何も無かったように接する先生に、

私は違和感を感じすにはいられなかった。



その後も肝心の事には一切触れず、私達は来た道を戻り始めた。



薄暗い夜道、先生はあの時のように私の手を取ることも、
腰を抱く事もしなかった。



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