神楽先生には敵わない
「編集長に何言われたの?」
そう僕が聞き返すと、あの…と何だか言いにくそうに俯いたまま。
みちるちゃんにとって深刻に考え込むようなことなのだろうか。
横顔から視線を逸らし煙草を灰皿に捨てると、
すぐにじゃないんですけど。とみちるちゃんがぽつりと呟いた。
「今ファッション部の人手が足りたくて、良かったらどうだって」
その瞬間、夏の生暖かい風が強く吹いて、
木々達がザワッと大きく揺れる。
それと同時に僕の息もピタっと一瞬止まった気がした。