ポーカーフェイス

 他愛もない言葉を交わして、もう何分経っただろうか。

 3人の前を通り過ぎていく人も、後ろを忙しく走る車も、ほとんど無くなっていた。


「あ、もうこんな時間」


 それに気づいたのは、廉だ。

 どこかいいブランドの物なのか、高級そうな腕時計に視線を落として呟いた。


「いいのかい?明日、早いんだろう?」

 
 2人に問うと、尋翔が言った。


「あぁ。そうだ。…名残惜しいけど」


 悠翔は、その言葉を合図に、路駐してあった自転車から飛び降りた。


「名残惜しいだなんて。…メールでも、なんでも寄越してくれればそれでいいさ」


 ケータイをコートのポケットから取り出した廉は、右手に持ったそれを軽く振りながら2人に言う。


「いつでも待ってるよ、2人からなら」

「他の奴らのはいらねぇって事か?」

「ふふっ。そう聞こえた?…まったく、揚げ足を取るのが巧いね、尋翔は」


 ケータイを元合ったあった所に突っ込むと、廉は踵を返した。


「潔く、サヨナラした方が、スッキリするんじゃないのかい?」


 後ろにいる2人に声を掛ける。


「だな」


 きっと悠翔だ。

 悠翔が、そう言って間もなく、後ろから足音が聞こえた。


 またね。


 背中で呟き、廉も足を動かし始めた。

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