ラブソングは舞台の上で
私の問いに、彼はポカンと呆れたような顔をした。
「昨日、ちゃんと自己紹介したのに」
「だって覚えてないんだもん」
合コン自体に乗り気じゃなくて、真面目に聞いていなかった。
彼はやれやれ、といった感じにため息をついた。
「田代晴海。晴海って呼んで」
こいつの名前だけは覚えてた。
顔に似合わず女の子みたいな可愛い名前だったから。
「23歳、大学4年生。来年の春から新社会人です」
「大学って、22歳で卒業じゃないの?」
「そうとは限らないよ。俺は一浪して入学したから、もう23」
ふーん。
それでも年下じゃん。
大学生ってチャラチャラしたイメージだったけれど、本当にチャラチャラしてるんだ。
こいつだけかもしれないけど。
「大学と劇団以外にも、コンビニのバイトとフットサルのサークルやってる」
「ずいぶんアクティブだね」
「まあね。ちなみに昨日の合コンに参加したのは、彼女じゃなくてミュージカルのヒロインを探すため」
首にかけていたタオルを、ヒュッと床に放った。
パサッと音がしたのと同時に、彼の両手が私が頭を乗せている枕に沈んだ。
彼の影が私の顔にかかる。
「だから……」
晴海はニヤリと笑みを浮かべ、言った。
「もしヒロインやってくれないなら、今この場で犯す」