ラブソングは舞台の上で

「へーぇ。意外! 超意外!」

どうせ似合わないですよ。

だから言いたくなかったのに。

当時も目立つタイプじゃないのに意外だねって、ちょっとバカにしたような感じでよく言われていた。

高校生バンドは、目立ちたいタイプの人たちがカッコつけるために始めたグループがほとんどで、その多くが自己満足の演奏だったし、耳が痛くなるくらい下手くそだった。

私のいたバンドは質の高い演奏をするのを目標としていたし、下手なくせに私たちをバカにしていたやつらを見返したくて、私は必死に歌を練習した。

その成果が、この歌唱力というわけだ。

「明日香、歌は好き?」

晴海の問いに、私の胸がドキッと反応した。

「うん、好き」

好きじゃなきゃ、バンドのボーカルなんてやってない。

本当はカラオケだって歌いたいけど、我慢しているのだ。

「じゃあさ。歌おうぜ」

鼓動が強くビートを刻んでいる。

「ステージの上で、思いっきり」

私は彼の笑顔と心臓のリズムにつられて、こくりと頭を振ってしまった。

「よろしく、マイヒロイン!」




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