☲ミラーが笑った◎
 智の強力な引きが功を奏したのか、ひろみもテニスに興味を持ち始め、翌日テニス部の顧問の先生に会って、入部することになった。

智とひろみは、初め玉ひろいやコートの整理をやらされていたが、先輩たちが休憩に入ると、ラケットを手に取り、ボールを打ち始めた。

 テニスを始めて一年後、二人は三年生と共に地区予選に出場することになった。

地区予選で二位までに入れば県南大会に出場することができる。

「ひろみ、がんばって県大会目指そうや」

「うん、とにかくミスさえしなければ勝てる」

 地区予選は広い河川敷のコートで行われた。

「男子の部は東のコート三面、女子の部は西のコート三面で、8時30分から開始します」

 大会アナウンスが流れ、時間ちょうどに第一試合が始まった。ひろみも智も緊張のためか、こちこちに固まっている。

「次はおれたちの番だ。準備運動を始めるぞ。1,2,3,4,1,2,3,4・・」

ひろみたちは、三年生の部長を中心に輪をつくり、準備運動を始めた。

いよいよひろみたちの出番になった。

「ひろみ、しまっていけよ」

智が大声で言った。

「うん」

ひろみも大きくうなづき、右手でVサインを返した。

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