真っ直ぐ歩けばー星ヶ丘高校絵巻ー
それから、あたしはいつもその人を

探すようになった。

三年生と一年生じゃ、教室も離れている

し、出会うことなんて滅多になかった

けど

移動教室の時、体育の時間

あたしは、いつも目の端でその人を

探した。

姿勢のよい立ち姿。

着崩さない制服。

一見、冷たいのかと思わせるような

きつい、静かな瞳。

運良くすれ違うことがあっても、彼は

あの時のことなんて、すっかり忘れて

いるかのようで、あたしのことなんて

見もしなかった。

もっともあたしも恥ずかしくて顔を

上げることなんてできなかったんだけ

れども。

でも

それでも

嬉しかったんだ。

それなのに。

彼女がいるなんて。


「遠野さんの彼女って、空手部のマネージャーらしいよ。」


あたしはグラグラする頭で、リカの声を

聞いていた。
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