真っ直ぐ歩けばー星ヶ丘高校絵巻ー
華奢な影がこちらを向く。


今日は束ねられていない

長い髪がこぼれる。


肩で息をしている、あたしを鷺原さんは

きょとんとした顔で見つめ返した。


「鷺原、綾さんですよね。」


わかっていたけど、一応確認する。

走ってきたせいか、顔が熱い。


汗ばむ手のひらを、あたしはぎゅっと握った。

「はい、そうだけど。」


何か?と、鷺原さんが目で問い返す。


「あのっ、すいませんでしたっ!!」


あたしは深々と頭を下げる。


「何?どうしたの?話しが見えないよ。」

鷺原さんは慌てように言って、あたしの肩に手を乗せた。

一呼吸置いて、あたしは顔をあげた。

その時

遠野さんが、鷺原さんの後ろから顔を出した。


あたしは顔が真っ赤になるのを自覚して

再び顔を下げる。


鷺原さんは、そんなあたしをじっと見ると

「涼、この子私の友達なの。

ちょっと話があるから、先帰ってて。」

と、遠野さんに言った。

あたしはちょっとビックリして、思わず

鷺原さんを見てしまう。

鷺原さんは、あたしを見てニッコリ笑った。

「お前はいつの間に、うっかりハチベエな一年生と友達になったんだ?」

遠野さんが、からかうような口調で言うので

あたしはきまりが悪くなる。

「涼!」

鷺原さんが、睨むように言うと


遠野さんは「ごゆっくり。」と言って


クスクス笑いながら、あたしたちの横を通り過ぎた。
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