私が恋した男(旧題:ナツコイ~海男と都会男~)
「助けていただいて、ありがとうございます」
「いいって。九条ちゃん、すっげーかっこよかったよ。姫川もね」
「ふん」

 高坂専務は笑って、姫川編集長はもじゃもじゃの髪の毛を掻く。

「九条」
「何ですか?」
「あれだ、さっきのガキに言った言葉、嬉しかった」
「へ?」
「バカにしないでって。海斗の職業、俺からもだけど他から見たらちょっと特殊だけどお前なら海斗を変えてくれると思う」
「そう…、ですかね」
「まだ何か気にしているのがあるのか?」

 気にしてる…、言ってもいいかな?

「実はー…」

 私は姫川編集長に先日海でナンパされそうになった所を海斗さんに助けられ、その帰りに海斗さんは私と姫川編集長に付き合っているんじゃないかって誤解しているかもしれないと話をした。

「んだよ、あいつ…」
「でも、ちゃんと言えてない私が悪いんです」
「お前はそれでいいのか?」
「伝えたいことは、あの季刊に込めて書きました」
「読んでなかったらどうすんの?」
「いつか、読んでもらえたらいいです」
「そっか…」

 私がどこか希望を込めた口調で言うと、姫川編集長はそれ以上何も言わないでいた。

「麻衣~、どうしちゃったの?本当に気分悪い?」

 茜が心配そうに私の所に来た。

「茜、ごめん。今日は帰るね」
「いいよ、また2人でどこか行こうね」
「姫川編集長、高坂専務、本当にありがとうございました。また明日からもお願いします」
「うん、またね」
「ああ、明日な」

 私はお店を出て、自分が住んでいる部屋に帰って行った。
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